【空き家再利用】リノベーションが創出する新たな付加価値

近年、日本の住宅市場において「空き家問題」が深刻化しています。

令和5年の総務省の調査によれば、賃貸や売買の空室、別荘などの2次利用を除いた、いわゆる「人が生活していない空き家」の数は全国の空き家数は385万戸と推計されています。
特に地方都市や郊外では人口減少と高齢化により空き家が増加し、地域の景観悪化や治安リスクの温床となっています。

一方、土地価格や工事価格の高騰で新築住宅そのものが手に入れにくくなっている状況もあります。
そこで注目されている手法の一つが「空き家リノベーション」です。

空き家イメージ

「ストック型社会」への転換

「空き家リノベーション」とは古く空き家となった建物に新たにデザイン、間取り、耐震性、断熱性などの手を加えることで、住宅や施設として再利用しようという考え方です。

これまでの住宅供給は日本ならではのスクラップ・アンド・ビルドの風潮から、「新築住宅」が当たり前でした。
しかし、社会環境の変化もあり、この先は既存ストックを活かしながら新たな付加価値を創出する「ストック型社会」への転換を考えていく必要があります。

「空き家リノベーション」はまさにその最たる取り組みの一つです。

空き家リノベーション

 

空き家リノベーションのメリット・デメリット

ここで空き家リノベーションのメリット・デメリットをいくつか挙げてみたいと思います。

メリット

〇 新築に比べて建物の骨格を活用できるため、総工費を2〜5割程度抑えられる場合がある。

〇 補助金・税制優遇措置が活用できる場合がある。

〇 基礎や構造体を活かすことで、新築より工期を短縮できる。

〇 新築と比べて早期入居が可能。

〇 解体廃材が減ることで、CO₂排出削減、サステナビリティ、SDGsに寄与できる。

〇 既存の建物の個性を活かしたデザインが可能。

〇 古民家・町家などは観光資源や地域ブランド価値にもつながる。

デメリット

〇 工事費の不確実性がある。解体後に想定外の劣化(基礎・配管・構造材)が判明し、追加費用が発生しやすい。

〇 性能面の制約がある。建物の構造や敷地条件によっては、耐震・断熱性能の改善に限界がある。最新の新築住宅と比べて劣ってしまうケースもある。

〇 建築基準法・耐震基準・用途地域制限などの法規制により、希望通りのリノベーションが難しい場合がある。

〇 資産価値の評価が難しい。新築に比べて金融機関の評価が低く、住宅ローンが通りにくいことがある。

天井柱

具体的に空き家リノベーションを進めていくためには、最初にメリット・デメリットをしっかりと理解することが大切です。
そして、知識のある建築設計の専門家や工事の専門家のサポートを受けることも重要です。

住宅利用に限らず、全国では町おこし、社会貢献、ビジネスなど多角的な視点で空き家リノベーションが行われています。具体的には、空き家をリノベーションして、宿泊施設、カフェ、子ども食堂、シェアオフィス、賃貸住宅などの用途に活用している事例があります。

また、空き家リノベーションに興味を持った方で、具多的な物件を見つけるための最もポピュラーな方法としては、「空き家バンク」があります。
大手不動産会社が運営しているものから、各自治体で運営されているものまであります。

まずは、希望する地域でどんな空き家があるのか探してみると面白いと思います。

 

「社会の負債」から「未来の資産」へ

余談ですが、私の父方の実家や親戚宅が宮崎にあり、そこも近年空き家になっています。
世代的にその土地と建物を継続できるのは私しかいないため、何とか活用できないかとこの記事を書きながらも模索しています。

空き家を「社会の負債」から「未来の資産」へと転換する。
その先に、人々の生活と地域社会の持続可能な未来がつながっていくと思います。

 

 

 

投稿者プロフィール

小川貴之建築デザイン
小川貴之建築デザイン一級建築士事務所
当事務所は個人住宅、共同住宅、事務所ビル、保育園、公共施設などの建築設計を幅広く手掛けております。特に近年は鉄筋コンクリート造(RC造)の建物に関しての新築、改修、調査のご相談が多く、得意とするフィールドのひとつになっています。神奈川・東京を中心に全国の建物に関わるご相談を承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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