【音楽著作権】高校や大学の演奏会でも著作権は発生する?

演奏会風景

新型コロナウイルス対策が緩和されたことにより、一定の規制の下に各種イベント会場に多くの人が集うようになりました。
音楽好きの高校生や大学生がさまざまな形で、演奏会を開くことが今後増えるものと思われます。
しかし一般に、聴衆を集めて演奏する場合、音楽著作権の問題が発生します。

ここでは高校生・大学生が演奏会で演奏する場合を例にとり、著作権の問題を考えてみたいと思います。

フルート演奏

演奏会で入場料を徴収するか否か

高校生・大学生が音楽のクラブ活動をしていて、部活動の一環として聴衆を集めて演奏会(例えば定期演奏会)を開く場合や、クラブ活動から離れて自主的なグループ活動として聴衆を集めて演奏会を開く場合があります。

一般に、作曲家の曲を利用して演奏する場合、作曲家から許諾を得ないで演奏すると作曲家が有している著作権を侵害する問題が生じますが、侵害となるかどうかは営利を目的としているか否かにより判断が異なります。

演奏会それ自体が営利を目的としたものでなく、聴衆から入場料を徴収せず、演奏者が報酬を受けない場合は、著作権者(作曲家)の許諾を得ていなくても著作権の侵害とはなりません。
演奏会のメンバーの中にプロの演奏者が含まれていたとしても、前記要件を満たせば著作権の侵害とはならず、著作権者に無断で演奏することができます。

 

演奏会で飲食物の販売があるか否か

ただ、ここで注意しなければならないのは、「聴衆から入場料を徴収しなければ問題ない」というわけではないということです。
演奏会を無料で行なったとしても、演奏会会場で飲食物を注文できる形態となっている場合は飲食代金の収入が付随することになり、営利目的と判断されるおそれがあります。
営利目的と判断される場合は、著作権者の許諾を得ない演奏は著作権侵害となります。

演奏会会場

 

著作権の保護期間

演奏会を有料で行なう場合は著作権者に無断で演奏すると著作権侵害の問題を発生しますので、これを回避するためには著作権者の許諾を得る必要があります。
著作権は原則として著作物が制作された時点で発生し、著作者の死後70年が経過するまで存続します。

2018年12月30日に施行された著作権法改正により、著作権の保護期間は死後50年間から死後70年間に延長されました。
著作権は特許権などと異なり、登録しなくても発生しますが、著作権に関する法的な事実関係を明らかにするなどの目的のもとに登録制度も整備されており、文化庁に対して登録申請手続きを行なうこともできます。

 

著作権の利用許諾申請

著作物が著作権の保護期間内のものであるかどうかの調査を行なうことや、著作権者に直接、許諾の申請手続きを取ることは容易ではありません。
音楽著作権の場合、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)に著作物の管理委託が行われていますので、日本音楽著作権協会に著作物の利用許諾申請を行なうことができます。

上記申請を行なえば、著作権の保護期間の問題について回答してもらえますし、著作権者に直接、著作物を利用するための手続をとる必要もなくなります。
具体的には、日本音楽著作権協会に著作物の利用許諾申請を行ない、利用許諾契約を締結し、使用料(利用許諾料)を支払います。

日本音楽著作権協会による使用料の料金体系は以下の通りです。

【A】公演1回ごとの使用料

総入場料算定基準額(入場料×定員数×80%)×5%+消費税相当額

【B】1曲1回5分までの使用料

総入場料算定基準額(入場料×定員数×80%)×0.5%+消費税相当額

上記A、Bで計算した使用料のうち、金額が低いほうの使用料が採用されます。
一般に、演奏する曲数が10曲より少ない場合は、Bの方が安くなり、10曲以上の場合は、Aの方が安くなります。

ドラム演奏

上記総入場料算定基準額は、2021年4月1日から2024年3月31日までの期間における演奏会の場合に適用されます。
運用基準では入場料に定員数を乗じて得た額により区分して規定されていますが、一例として入場料に定員数を乗じて得た額が、800万円までの場合は上記に示した総入場料算定基準額が採用されます。

著作物の利用許諾申請は、演奏会開催日の5日前までに行なう必要があります。
使用料は演奏会終了後に支払うことになります。

その他、具体的な手続きについては日本音楽著作権協会に相談されるとよいでしょう。

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アルス国際特許事務所
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特許・実用新案としては主に、プラスチック・洗剤・機械・光学機器部品・建築・材料・日用品を取り扱っており、営業戦略的に価値ある特許取得を目指します。意匠としては、光学機器部品・清掃具関係を主に手がけております。商標については、ネーミングの段階からご相談に応じております。主要国の外国代理人とは密に連携しておりますので、緊急な案件にも速やかに対応できます。

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