【企業PRの効果絶大】奨学金「代理返還」制度・4つのメリット

大学生活のイメージ

2022年度の学校基本調査(文部科学省)によると、大学・短大・専門学校などを含む高等教育機関への進学率は83.8%にも上っています。

内訳は4年制高等専門学校1.0%、短大3.7%、専門学校22.5%、そして大学への進学率は50%を優に超えて、56.6%にものぼります。
バブル崩壊後の失われた30年間、給与は横バイが続いていましたので、高等教育機関への進学率の上昇に比例して、学費などの家計負担も増しています。

そのため、奨学金を受給する学生が増えています。

独立行政法人日本学生支援機構(以下、「機構」)の「令和4年度 学生生活調査」では、

奨学金を受給している学生の割合は、

大学(昼間部)で55.0%

短期大学(昼間部)で61.5%

大学院修士課程で51.0%

大学院博士課程で58.9%

となっています。

半数以上の学生が奨学金を受給しているのが現状です。

奨学金には、返還不要の「給付型」と返還が必要な「貸与型」の2種類ありますが、「給付型」は様々な要件があるため受給できる学生は少数です。
多くの学生は「貸与型」の奨学金を受給しています。

この奨学金制度について、近年注目されているのが「代理返還」という制度です。

「代理返還」は奨学金を返還している若年者にとって、また採用する企業にとっても様々なメリットがあります。
そこで今回は、この奨学金「代理返還」について機構の制度を中心に解説します。

奨学金イメージ

「代理返還」の仕組み

これまでも奨学金を返還している社員に対して、奨学金の一部を手当として給与に上乗せして支給している企業はあります。
これと比べ「代理返還」は2021年4月に始まった制度で、

「会社から支給された手当を従業員が機構に送金する仕組み」から、

「企業が従業員に代わって奨学金の一部または全部を代理で機構に直接返還する仕組み」

となります。

企業が直接返還するため、年々増え続けている奨学金返還の滞納ということもなくなります。

「代理返還」は会社が負担する金額や期間、対象者などについて制約はありませんので、原則として自由に設計できます。

たとえば、

「入社月から月々10,000円を、最長10年間負担する」

「入社1年後から月々20,000円を上限100万円まで負担する」

などの設計が可能です。

奨学金イメージ

奨学金代理返還制度の4つのメリット

企業が「代理返還」制度を導入するメリットには、次のようなものがあります。

① 若年者の新規採用につながる

奨学金を受けているのは20代から30代の若者です。
超少子化の折、若年者の採用にはどの企業も苦戦していますので、「代理返還」を導入している企業には採用競争の中で他社との差別化が図れます。

② 定着・離職防止につながる

奨学金の返還期間は平均15年かかります。

企業がそれを一部または全部肩代わりしてくれるため、若年者は長期雇用を希望します。
長年の返還により会社への帰属意識が高まり、離職率の低減につながります。
離職率が低減すれば、これまで新規採用や教育に費やしていた費用と時間が大幅に削減できます。

③ 所得税・社会保険料のメリット

奨学金を給与に上乗せして支給する場合、収入が増えますので、その分増税と社会保険保険料が増額になります。
しかし、代理返還では返還額に係る所得税は非課税扱いとなります。
企業の負担する奨学金は法人税上は給与として損金算入ができるほか、「賃上げ促進税制」の対象にもなりますので、一定の条件を満たせば、法人税の税額控除の適用を受けることができます。

また、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)上のメリットもあります。
社会保険料を決定する際の標準報酬月額に含める必要はありませんので、本人及び企業ともに社会保険料が増えることはありません。

④ 企業PRに

機構の代理返還を活用する場合、機構のホームページに当該企業実名との代理返還制度の概要が掲載されます。
また、機構が大学などに紹介してくれることもありますので、企業PRには絶大の効果があります。

大学の受講風景

2023年12月末時点で、機構の代理返還制度を導入している企業は1,463社にものぼります。

新卒者や若年の転職希望者が企業を選ぶポイントとして、この「代理返還制度の有無」を上位に挙げる日が来るのではないかと思います。
これからは若年者採用を希望する企業にとって、「代理返還」は必須となりそうです。

詳しくは、独立行政法人日本学生支援機構のホームページをご覧ください。

独立行政法人日本学生支援機構 | JASSO

 

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社会保険労務士法人 ジンザイ
社会保険労務士法人 ジンザイ社会保険労務士
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