亡くなった親に多額の借金や税金などの滞納があったり、誰だかもわからないような疎遠な関係だった人の相続人になってしまったりしたときに、「自分は相続人になりたくない」と考えた時にとる手続きを相続放棄と言います。
相続放棄手続きは、手続きできる期限や方法が法律で決まっています。またメリット・デメリットがあります。
それぞれ、見ていきましよう。
一般的な「放棄」は「相続放棄」ではない
相続のご相談の時に、「私は放棄しているから」とご説明される方がいらっしゃいます。これは、法律的な「相続放棄」ではありません。
亡くなった親が多額の借金をしている場合に、たとえば「母が全部相続するから、私はすべての財産を受け取ることを放棄した。」のような意味で言っているのであれば、債権者からの支払いの請求を拒否することはできません。
プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継がず、相続手続きに一切関与しなくてよくなるためには、家庭裁判所で法律にもとづいた相続放棄の手続きを取る必要があります。
相続放棄のメリット・デメリット
相続放棄のメリットは、「亡くなった人の借金を引き継がなくて良い」ことになります。
また、相続放棄手続きをした人は、最初から相続人ではないという扱いになりますので、遺産分割協議書に参加することはありません。
したがって、「相続の揉め事に巻き込まれたくない」「遺産分割協議に参加したくない」と思っている方にとっては、メリットになります。
相続放棄のデメリットは、「プラスの財産を相続することができない」ことになります。
誰もが借金は引き継ぎたくないけど、プラスの財産は欲しいと考えますが、相続放棄手続きをすると、マイナス財産を負担しなくて良いかわりに、プラスの財産を受け取ることができなくなります。
また、「一度相続放棄手続きをしてしまうと、取り消しできない。」こともデメリットの一つと言えます。
「どんな財産があっても、最初から相続人として関わりたくない」という人以外は、亡くなった人の財産を確認してから手続きを進める必要があります。
さらに、自分が相続放棄手続きをすると、次の順位の相続人に相続権が移ります。次の順位の相続人と連携しておかないと、せっかく良好だった関係を崩してしまうことも考えられます。次の順位の相続人のことも考えながら手続きを進める手間がかかるという点がデメリットと言えます。
相続放棄の手続きは期限が決められている
プラスの財産、マイナスの財産をじっくり確認してから相続放棄の手続きを進めたいところですが、相続放棄の手続きは期限が決められていて、「相続が開始したことを知った時から3ヶ月」以内に裁判所に所定の書類を提出しなければなりません。
「相続が開始したことを知った時」とは、原則として「相続が開始したこと」と「自分が相続人となったこと」を知ったときです。
期間を過ぎてしまった場合は、原則としてそれ以後に相続放棄をすることはできません。
ただし、経過していても、例外的に相続放棄が認められるケースもあります。
亡くなったことは知っていたけれども、3ヶ月経過後に借金返済の通知が来た場合など、認められるケースがあります。
経過している場合は、自身で判断せず専門家に相談しましょう。
相続放棄手続きが受理されなかったり、無効になるケースがある
相続放棄の手続き裁判所に提出しても、下記のようなことをしている場合には裁判所が手続きを受理しなかったり、受理されたあとでも無効として扱われることになります。
① 亡くなった人の財産を受け取ってしまった。
② 亡くなった人の財産を処分してしまった。
③ 遺産分割協議書を作成し相続人として署名捺印してしまった。
④ 亡くなった人の借金を返済してしまった。
無効として扱われると、たとえ裁判所で相続放棄手続きが受理されていたとしても、後々亡くなった人にお金を貸していた人から返済を請求されるおそれがあります。
ご自身が相続人になったときに、相続放棄を選択するべきかどうか、相続放棄をする必要があるなら、できるのかどうか。
相続放棄の手続きを進めるうえでは、いろいろなことに注意する必要があります。
トラブルのない相続放棄手続きをお考えならば、ぜひ、溝淵事務所に相談してください。
投稿者プロフィール
- 昭和54年の開業以来一貫して「お客様第一」の姿勢を徹底しております。 進化する生活の町「武蔵小杉」を基盤にもっとも身近なリーガルアドバイザーを目指し、総勢35名のスタッフで業務を行っています。 お客様との「信頼関係」それが私たちの財産です。 これからも、お客様のおかげで私たちがあることを忘れずに、お客様第一主義 を徹底いたします。
最新の投稿
- 過料2024年9月20日【過料の対象】裁判所に黙って遺言書を開けたら?
- 司法書士の体験談2024年8月2日【私が司法書士になるまで】母と夫に感謝の気持ちしかありません
- 会社設立登記2024年7月12日【法人登記】社長さんの住所非公開によるメリット・デメリット
- 相続人申告登記2024年6月11日【相続人申告登記】3年以内に遺産分割できなくても大丈夫?
100年ライフマネジメント
月々1000円(税込)で専属アドバイザーには何度でもご相談いただけます。