健康保険は従業員本人だけでなく扶養家族(健康保険法では「被扶養者」といいますが、ここでは一般的に使用される「扶養家族」とします)が病気やケガをしたとき、または出産したときなどに必要な保険給付が行われます。
扶養家族の条件に該当すれば人数に関係なく、保険料はかからずに給付を受けることができます。
また、配偶者が扶養家族に該当する場合、国民年金第3号被保険者に該当し、
国民年金保険料を納めることなく加入しているものとして扱われますので、有利な制度といえます。
この健康保険の扶養家族について、協会けんぽでは毎年10月頃に扶養家族の資格確認を行っています。
就職や死亡などで扶養家族の資格を喪失しているにもかかわらず、まだ加入中となっていないかの確認作業です。
今回は扶養家族になる条件と留意点について確認したいと思います。
扶養家族になる条件
健康保険の扶養家族になるには、次の(1)および(2)の要件を満たす必要があります。
ただし、満75歳以上は除きます。
(1)扶養家族の対象範囲は、➀または➁に該当する親族になります。
➀ 従業員の祖父母(曽祖父母も)、父母、配偶者、子、孫、弟妹、兄姉が対象で、従業員の収入により、その扶養家族の暮らしが成り立っている人(同居でなくても可)
➁ 次に該当する扶養家族で、同居して生計を共にし、従業員の収入により暮らしが成り立っている人
・従業員の三親等以内の親族(➀以外)
・従業員の未届の妻の父母および子(未届の妻が亡くなった後における父母および子)
(2)収入条件
収入条件は、家族と同居しているか否かによって異なります。
【家族が従業員と同居している場合】
年間の給与収入が130万円未満(60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、従業員の年間収入の2分の1未満であること。
ただし、従業員の年間給与収入の2分の1未満にあてはまらない場合でも、従業員の年間収入を上回らず、世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、扶養家族となる場合があります。
【家族が従業員と同居していない場合】
年間の給与収入が130万円未満(60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、従業員の援助による収入額より少ない。
留意点
扶養家族に関するお問合せの中で、次のように誤解されることがあります。
ここで確認をしたいと思います。
(1)給与収入130万円未満(又は180万円未満)の「収入」※とは?
あくまでも給与収入が130万円未満が条件で、給与所得ではありません。
◎ 給与収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金、不動産所得や配当所得、事業所得も含まれます。子供であっても130万円以上の不動産収入等がある場合は、扶養家族にはなれません。
◎ 給与収入の場合、通勤交通費も含んだ給与額となります。
◎ 過去の収入ではなく、扶養家族に該当する時点以降の年間の見込み収入額のことをいいます。例えば、退職した年の給与収入が130万円以上であっても、退職した後の給与収入が130万円未満または無収入の場合は退職日の翌日から扶養家族に該当します。
※「収入」と「所得」の違いについては「〝収入〞と〝所得〞は、なにが違うのか?」をご覧ください。
(2)その他のポイント
★ その1
配偶者が扶養家族と認められた場合は、国民年金第3号被保険者になります。
この場合、国民年金保険料は加入しているものとして扱われます。
ただし、子供は扶養家族に認められても20歳以上になれば、国民年金保険料の支払い義務が生じます。
★ その2
退職後、失業給付を受給するまでの給付制限期間中(自己都合の場合は概ね3ヵ月程度)は、他に収入がなければ扶養家族になることができます。
ただし、失業給付の基本手当日額が 3,612 円以上(60 歳以上等は 5,000 円以上)の人は、給付制限期間が過ぎた段階で扶養家族から外れなくてはなりませんので、手続きが必要になります。
★ その3
扶養家族に類似した事項として、家族手当に関する質問があります。
「扶養家族に該当する時期は、健康保険法を適用すべきか、それとも所得税か」という質問です。どちらでも問題ありません。しかし、健康保険法と所得税法では対象となる時期が異なります。
上述のとおり、健康保険法は給与収入が130万円未満が見込まれたとき加入ですが、所得税法では12月31日現在で判断します。
健康保険証の発行や回収手続きを考慮すると、家族手当を支給(または不支給)とする時期は、健康保険法を適用する方がわかりやすいかと思います。
投稿者プロフィール
- 当事務所は、従業員1名から上場企業まで幅広い企業様とお取引をさせていただいています。各社の企業規模や業種特性に応じて、適切かつ柔軟に対応できるのが強みです。また、経営理念として、人事・労務・社会保険業務を通じて、経営的な視点からお客様企業の(1)より良い企業風土づくり、(2)より強い企業体質づくり、(3)より業績の向上、につながるよう日夜努めています。
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