今年の3月18日のニュースにおいて、
「最高裁が成年後見人について身近な親族を選任することが望ましい旨の通知をした」
との報道がなされました。
今回はこの報道を踏まえ、
成年後見制度とはどういったものか、
そして、
成年後見人になるのはどういった人か、
また、その現状についてお話したいと思います。
成年後見制度とは
①
通常、人は自分の財産を自分で管理して、自分の意思のもとで利用しています。
しかし、認知症などの病気や知的障害などにより、自分の意思のもとで自分の財産を管理できない場合があります。
この場合、成年後見人が選任され、本人の財産管理を行うことになります。
民法では「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」について、家庭裁判所が成年後見人を選任することとされています(民法7条)。
なお、程度が軽い場合には成年後見人ではなく、保佐人や補助人が選任され、本人の財産管理の代理や補助をすることになります。
②
成年後見人は被後見人(後見人を付けられた本人)の財産を管理し、本人に代わり、その財産に関する法律行為をします(民法859条1項)。
例えば、預貯金を管理して施設費用を支払ったり、賃貸物件の賃料を受領したり、賃貸借契約を結んだりなどです。
裁判所の許可を得た上で、自宅を売却することもできます。
他方、基本的には本人の財産の維持管理ですので、運用などということはできず、管理の方法が硬直的であるという点がデメリットとされています。
成年後見人は、被後見人の意思を尊重し、心身の状態などに配慮しなければなりませんので、本人のために財産管理をすることになります。
成年後見人になる人とその現状
①
成年後見人となるには、未成年者や破産者のような場合を除き、特に制限はありません。
親族が後見人になる場合(親族後見人)だけではなく、弁護士などのような専門家が後見人となる場合(専門家後見人)もあります。
②
誰が後見人となるかは、成年後見人の選任を申し立てた人(一定範囲の親族など)の希望を踏まえ、最終的には裁判所が決めることになります。
裁判所がいかなる基準を基にこれを決定しているかは必ずしも明らかではありませんが、本人の財産管理のためにどの程度の専門知識が必要かなどを考慮しています。
また、本人が死亡した場合に相続人となる者の間で本人を巡って紛争が予想されるような場合は、専門家後見人を選任することが多いようです。
報道の通り、親族による不正事案への対応として、専門家後見人が選任されることが多くなっていたということはあります。
③
今回の報道で示されたのは、
「最高裁が成年後見人について身近な親族を選任することが望ましい旨の通知をした」
ということで、選任の基準に関するもののようです。
ただ、報道が指摘したような内容かどうかは、実際の通知を確認する必要があります。
ちなみに、私が聞いたところだと、
必ずしも最高裁は「いかなる場合も親族後見人を選任する」とまでは言っていないようです。
今後、
「専門職単独」、
「専門職と親族の複数後見」、
「専門職の後見監督による親族後見」、
「中核機関の支援による親族後見」
といった多彩な選任バリエーションを用いて、
事例により、きめ細かく対応した選任を行うという考えを持っているようです
※今までは、専門家後見人が選任される場合は親族後見人が一緒に就くことはそれほど多くなかったと思います。
報道では
「後見人にふさわしい親族など身近な支援者がいる場合は、本人の利益保護の観点から親族らを後見人に選任することが望ましいと提示した」
とされていますが、
これは現時点でもそのような考え方のもとで運用されているものと考えられ、
今後はそれをさらにきめ細かく対応できるようにすると思われます。
上記のように、親族間の紛争が強い場合などは、今後も専門家後見人が選任されるものと思われますし、
その意味では今回の最高裁の通知によって、
突如として「いかなる場合も親族後見人が選任される」ことにはならないと思います。
今回の通知の内容がどういったものであるにせよ、
重要なことは、本人の財産管理能力が十分でない場合、
「適切に成年後見制度を利用する」という知識や認識を持つことが必要ではないかと思います。
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