今年は首都圏にも15号、19号と大型台風の上陸が続きますね…
先月の台風19号では、いまやタワーマンションが建ち並ぶ高級住宅街となった武蔵小杉の一部のマンションで浸水・停電の被害が発生しました。
あまりの雨量に多摩川の水位が上昇し、河川の水が排水管に逆流した結果、マンホールなどから噴き出したのが原因のようです。
エレベータやトイレが使えない…など、大変な事態となりました。
3年ほど前、私は「東洋経済オンライン」に、以下のような記事を書かせてもらいました。
この中で、東日本大震災に触れ、
『勝どきや港南、芝浦、豊洲といったタワーマンション街と比べて唯一、地価が上がっているのは、これらの4地域が臨海部なのに対し、武蔵小杉が「内陸部」だという点。よみがえるのは東日本大震災の記憶です。浦安などの埋め立て地においては液状化による地盤のひずみが見られました。 臨海部のタワーマンションには、「大地震に地盤が耐えられるのか」「津波は大丈夫か」などの不安がよぎりますが、内陸部の武蔵小杉はそうした心配が相対的に小さいのです。』
と書きました。
確かに埋立地と比較すれば地盤はやや強いかもしれませんが、
現在の武蔵小杉のタワーマンションエリアは、かつて蛇行していた多摩川を直線的に整備した地域であり、地盤が軟弱であったとの指摘もあります。
今回の水害は地盤の問題ではないにせよ、水害とは全く無縁の土地といい難く、この点に関しては少し読みが甘かった分はあるかと思います。
では今回の水害により、武蔵小杉のブランドイメージは低下し、マンション価格も下落するのでしょうか?
実際のマンションの売買価格より検証してみようと思います。
まず、武蔵小杉のタワーマンションブームの先駆けとなった、「ザ・コスギタワー」(2008年竣工、地上49階建)の新築時の販売価格(30階付近)は1坪当たり180~220万円。
東洋経済オンラインの記事を書いた2016年の時点で、中古売り出し価格は280万円~320万円と高騰していました。
では、最近の売出価格はどうなっていたのか?
2019年度(最新のデータは台風19号前の夏ごろとなります)を見てみると、260万円~280万円程度と落ち着きを見せているようです。
そして今回、浸水被害に合った、某大手不動産会社の47階建マンション(2008年築)価格も同様の動きを見せていました。
データ上は、築10年程度のタワーマンション売出価格のピークは2015~2017年ごろのようです。
「台風19号が影響する前に武蔵小杉のタワーマンションの価格が落ち着きを見せていたのはなぜか?」
と原因を調べてみたところ、
◎武蔵小杉のタワーマンションの価格が高騰し、新築で1坪当たり400万円を超えるものも出てきた。これは都内の高級マンションエリアの価格と比較しても遜色のないレベルでまで達している。そうであれば「都内で物件を探す方がよい」と考えるエンドユーザーが増えている。
◎横須賀線駅の開業や、東急目黒線直通等の影響で都心へのアクセスが良くなり人気が高まっているが、通勤時の駅のホームの慢性的な混雑等、急激な人口増に伴うインフラの整備が追い付いていない。
これらの影響が、2017年以降ぐらいから出てきたようです。
台風19号の水害がマンション需要の減退にどの程度影響するのかは分かりませんが、もともと工場地だった跡地にタワーマンションが建ち並び、人気の街として発展し、急激にマンション価格が高まりすぎてしまった故に、今度は新たな需要が停滞し、ピークアウトが見られることは確かなようです。
今後の動向に注視して、また何か大きな動きが見られれば改めて報告したいと思います。
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