一人暮らしをしていた親が亡くなり、空き家となった家屋を相続等により取得し、売却した場合には一定の要件のもと、譲渡所得から最高3,000万円の特別控除が受けられます。
厚生労働省の「令和4年国民生活基礎調査」によると、65 歳以上の単独世帯は全世帯の31.8%になるそうです。
今回は「空き家の3,000円控除」の概要、令和5年度税制改正についてまとめてみました。
特例措置の適用要件
相続した空き家を売却した際に発生した譲渡所得は課税対象となりますが、特例措置を利用すると、最大3,000万円まで控除することができます。
ただし相続開始前に相続人が既に共有により所有している部分については、この特例の適用はありません。
【1】被相続人の居住用家屋の要件
① 昭和56年5月31日以前に建築された建物であること
② 相続開始の直前において、被相続人が一人暮らしをしていたこと
③ マンションのような区分所有登記がされている建物でないこと
【2】譲渡の要件
① 建物および土地の譲渡価額の合計額が1億円以下であること
② 相続開始から3年後の年末までに売却すること
③ 相続時から売却時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないこと
④ 建物が耐震基準を満たしていること
⑤ 建物を取り壊す場合、譲渡までに新たに建物を建てないこと
⑥ 売却先が、配偶者・一定の親族等でないこと
【3】老人ホームへの入居も対象
被相続人が老人ホーム等に入居していた場合にも、以下の要件を満たす場合に限り特例が受けられます。
① 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、老人ホーム等に入所すること
② 老人ホーム等に入所した時から相続開始までの間、事業や賃貸などに使用されていなかったこと
③ 平成31年4月1日以降の売却であること
上記の場合は、次のいずれかの書類による確認が必要となります。
● 電気ガスなどの契約者及び使用中止日が確認できる書類
● 老人ホームの外出、外泊等の記録
● 市区町村が認める者が家屋の管理を行っていたことの証明書等
【4】「相続税の取得費加算の特例」との選択
相続した土地等を相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに譲渡した場合には、相続税額の一部を取得費に加算して譲渡所得を計算することができる特例があります。
「空き家の3,000万円控除」はこの特例との選択適用となります。
【5】「小規模宅地等の特例」との適用関係
被相続人の居住用家屋の敷地を相続する場合、特定居住用宅地等については、相続税の課税価格から面積330m²までその評価額の80%を減額できる特例「小規模宅地等の特例」があります。
一定の要件を満たす場合には、「小規模宅地等の特例」と「空き家の3,000万円控除」を併用することもできます。
ただし、小規模宅地等の特例においては、その宅地等を相続税の申告期限まで所有していることが要件とされていますので、ご注意ください。
【6】他の特例との関係
「空き家の3,000万円控除」の適用を受けても「特定居住用財産の買換え特例」、「住宅ローン控除」等の適用制限はありません。
ただし、同一年内に「居住用財産の譲渡所得の3,000万円控除」を併用する場合に限り、2つの特例を合わせて3,000万円が控除限度額となります。
令和5年度税制改正による変更点
令和6年1月1日以降の譲渡が対象となりますが、特別控除の要件が拡充されます。
① 令和9年12月31日まで適用期間を4年間延長
② 売買契約に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修工事または取壊しを行った場合には、工事の実施が譲渡後であっても適用対象に追加
③ 相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額が一人当たり2,000 万円
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