【デジタル遺言】実用化の前に知っておきたい法務省案

デジタル遺言とは、自筆での遺言書や公証役場に出向いて作成する遺言書とは違い、スマートフォンやパソコンなどの電子的機器を利用して作成、保管する遺言書のことです。 もっとも、デジタル遺言はまだ無効であり、現在法務省が実用化に向けて検討中です。 現在の遺言制度は、あまり知られていないものも含め7種類あります。 そのうち、最も身近である「自筆証書遺言」「公正証書遺言」についてご説明します。 7種類の遺言

●自筆証書遺言

遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すことによって作成される遺言書です。 全文を手書きしなければならないことが特徴です。 もっとも、別紙財産目録を作成する際には、パソコン等で財産目録を作成してプリントアウトすれば自筆する必要はありません。 また、自筆証書遺言は、紛失等を防ぐために、法務局に保管してもらうことが可能です。 自筆証書は、誰の関与もなく作成できることが利点です。 他方、全文を手書きで書くことの大変さや、表現方法、方式を間違えることで無効となってしまう可能性があります。 それに加えて、紛失の恐れ、遺言内容を快く思わない家族等が破損するなどというリスクがあります。

●公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が公証役場に行き遺言内容を伝えて、公証人が作成する公正証書です。 公正証書を作成するには、身分証明書(運転免許証や印鑑登録証明書等)や証人2人が必要です。 遺言書の原本は公証役場に保管されるので紛失の恐れはありません。 他方、公正証書遺言は公証役場まで行かなければならないなど、特に高齢者には難しい場合もあり得ます。 デジタル遺言イメージ

デジタル遺言の現時点での法務省案

現在、法務省で検討されているデジタル遺言は以下の4案です。

【甲1案】証人の立会いを要件とする案 ① 遺言者が、電磁的記録に遺言の全文等を特定するに足りる事項を記録すること ② 遺言者が、証人二人以上の前で、①が自己の遺言に係るものである旨等を口述すること ③ 証人が、遺言者に対し、①の内容が②の内容と符合することを承認すること等 ④ ②及び③の口述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により電磁的記録に記録すること

【甲2案】証人の立会いを不要とする案 ① 遺言者が、電磁的記録に遺言の全文等を記録し、電子署名を行うこと ② 遺言者が、①の電磁的記録に記録されている遺言の全文等(財産目録を除く)を口述すること ③ ②の口述を録音し電磁的記録に記録すること ④ ③の記録をするに当たっては、遺言者の周囲に遺言者以外の者が立ち会わず、遺言者以外の者が②に定める口述をすることができないようにする措置をとること

【乙案】公的機関で当該電磁的記録を保管して遺言する方式 ① 遺言者が、電磁的記録に遺言の全文等を記録し、電子署名を行うこと ② 遺言者が、オンラインの方法により、公的機関に対し、①の保管申請をすること ③ 公的機関が、遺言者に対し、当該申請人が本人であるかどうかの確認をするため本人確認資料を提供すること ④ 遺言者が、公的機関に出頭し、遺言の全文(財産目録を除く。)を口述すること ⑤ 公的機関が、保管の申請手続が②から④までに従って行われた旨を記録し、①の電磁的記録を保管すること

  【丙案】電磁的記録をプリントアウトするなどして遺言の全文等が記載された書面を公的機関で保管して遺言する方式 ① 遺言者が、全文が記載された遺言書に署名すること ② 遺言者が、公的機関に対し、①の遺言書を提出して、保管の申請をすること ③ 公的機関が、遺言者に対し、当該申請人が本人であるかどうかの確認をするため本人確認資料を提供すること ④ 遺言者が、公的機関に出頭し、①の遺言書に記載された遺言の全文(財産目録を除く。)を口述すること。ただし、公的機関は、遺言者から申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、ウェブ会議の方法によって上記の口述をさせることができる ⑤ 公的機関が、保管の申請手続が②から④までに従って行われた旨を記録し、①の遺言書を保管すること

遺言書作成イメージ

デジタル遺言のメリットデメリット

メリットとしてデジタル遺言だと、パソコン等を作成し自分で作成し、かつ、場合によっては公的機関に保管してもらうことができることです。 これは現在の自筆証書遺言の方式を簡略化し、かつ、公正証書遺言のように遺言書を公的機関で保管してもらえるということで、両者の良い面を反映させていると言えます。 また、丙案だとオンラインでも遺言書を作成できるので、公的機関に出向く必要はなく手間が大きく減らされます。 デメリットとしては、やはりスマートフォンやパソコンなどに詳しくない方には利用しづらいことです。 また、長年続いた遺言書作成方式と大きく異なるので、浸透するまでは時間がかかるでしょう。

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原・井上・藤川法律事務所
原・井上・藤川法律事務所
当事務所はさまざまな分野の法律紛争に対応しておりますが、案件としては相続事件がやや多めになっております。相続対策は早いほど効果的。気になることがある方は一度ご相談ください。平成25年4月 当事務所の弁護士たちで、東洋経済新報社より『新版 図解 戦略思考で考える「相続のしくみ」』を上梓しました。事務所は、アクセスの良い銀座一丁目駅にあります。まずはお問い合わせください。

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